2回目となるアブストラクトの会は、ゲーム学会「ゲームと数理」研究部会との共同開催で、前半の3時間ほどは研究発表会でした。後半は昔のASGSのように、自由に遊んだり討論したりします。「アブストラクトゲーム博物館とASGS研究会の紹介」「ゲーム戦略を題材とする持続的なプログラミング演習」「陣取りゲームFisheryのルールと特徴」「摩訶大将棋と薬師如来」「古代盤双六の復刻」という5つの発表がありました。香川や大阪からも発表者、参加者が来てなんだかすごいです。
そのあとは、通常どおりのアブストラクトゲームの会です。自作ゲームの発表があったあとみんなで色々遊びました。
テリトリー Territories
(プレイ時間 25分)
久しぶりに会う川崎さんに「テリトリー」を教えながら遊びます。2人で境界線を操作していくのが面白いです。端まで到達させれば、次は自由な所から(相手の隣はダメですが)始められるので、なるべくその権利を得ようとするニムのような側面もあります。もっとやりこみたいゲームです。
結果:自分 35、川崎 13
オード Ordo
(プレイ時間 30分)
数ある土嚢から川崎さんが選んだのは「オード」、渋い選択です。分割されて修復できないと負けなので、分割できないギリギリの体形で少しづつ攻めていきます。ちょっともったりしているのも「オード」の魅力かもしれません。平行移動のルールなども、なかなか活用するのは難しいですね。お互いにコマを取り合って、うまく分割して勝利。
結果:自分 勝利
インディゴ Indigo
(説明 5分 プレイ時間 各45−55分)
インディゴはクニツィアが2012年にラベンスバーガーから出版したタイル配置、経路(ルート)建設のゲームです。一辺が5ヘックスのヘックスヘックスボード(計61ヘックス)、61枚のタイル(青タイル7枚、経路タイル54枚)、得点となる宝石3種24個(黄(琥珀)12個、緑(エメラルド)10個、青(サファイア)2個)、そして各プレイヤーのついたてとプレイヤーマーカーを使います。ボード上のコーナーと中央の7ヘックスに青いタイルを置き、6箇所のコーナーにはそれぞれ黄色の宝石1個を、中央には緑の宝石5個と青の宝石1個を置きます。残り半分の12個の宝石は脇によけておきます。目的は、タイルを配置して経路を作ることで、宝石を自分の所有するボードの辺に導くことです。
ボードの各辺にはその辺の所有を表すためのプレイヤーマーカーを置く場所が2つあり、1人が両方に置いて独占を表すか、2人が1個ずつ置いて共有を表すかのどちらかで、プレイ人数によってセットアップが異なります。2人の時は互い違いの3辺をそれぞれ独占所有しますが、3人の時は1辺を独占し2辺を他プレイヤーと共有します。4人の時は1人で独占する辺はなく、3辺はすべて他プレイヤーと共有することになります。2−4人いずれも対称的になるようにうまくできています。
54枚の経路タイルは、タイルの6辺のうち、2辺ずつをペアにつなぐ5通りすべての組み合わせがあり、それぞれ6枚か14枚ずつ入っています。これらはシャッフルして裏向きに山札とし、各プレイヤーは手札としてタイル1枚を持ちます。これで準備完了です。
手番には手札のタイルをボード上の任意の空きヘックスに任意の方向で置き、そのあと山札からタイル1枚を補充します。ただし、ボード外周のヘックスで外周に面した2辺を1枚のタイルの急カーブで繋ぐ置き方だけはできません(これはボードに明記してあります)。タイルを置いた結果、宝石のスタート地点と繋がったら、宝石を経路に沿って、進められるところまで進めます。宝石が自分の所有する辺に到達すれば、宝石を獲得します。2人で共有する辺の場合には、脇によけておいた宝石をどちらかのプレイヤーに与えます(つまり2人とも宝石を獲得します)。獲得した宝石は、ついたての自分の側に隠しておきます。宝石同士が衝突すると、宝石はボードから除外されてしまい、誰のものにもなりません。なお、中央の青の宝石は5個の緑の宝石がすべて動いた後に動かします。つまり中央のタイルに隣接する最後のタイルの方向に青の宝石は進むのです。
すべての宝石が獲得、あるいは除外されたらゲーム終了です。黄、緑、青の宝石はそれぞれ1、2、3点です。最も得点の高いプレイヤーの勝利です。同点ならより多くの宝石を持っているプレイヤーの勝利です。
幾何学的に非常に美しいゲームです。タイルが5種類しかないというのが素晴らしいです。同種のゲームである「メトロ」「通路」「トポロジー」などはタイルの種類が多すぎて行き当たりばったりになるしかなく、どうしても短期的な戦略になってしまうのですが、インディゴでは5種類しかないので欲しいタイルを引く確率はぐっと高くなり、長期的な戦略も生まれるのです。5種54枚のうち、対称性が高く配置の選択肢が少ない2種類は6枚ずつ、対称性が低く配置の選択肢が多い3種類は14枚ずつというのもよく考えられています。全54枚中、直線46本、緩カーブ56本、急カーブ60本ですが、枚数で考えると、直線と急カーブは34枚ずつ、そして緩カーブは28枚に描かれています。
このゲームは、「3人や4人で協力するところが面白い」、「手軽なファミリーゲーム」、「頑張って端まで宝石を運んでも最後に取られてしまうタクティカルなゲーム」、などという評価ばかりを見かけるのですが、決してそんなことはありません。自分の考えでは、適正人数は2人です。協力の要素は取って付けたものに思えてしまうくらい、2人が断然面白いのです。手軽なファミリーゲームではなく、ジレンマがタップリで長期的戦略もある、良質なセミアブストラクトゲームなのです。なおギークの適正人数は一応4人になっていますが、詳細を見ると2人、3人、4人が僅差なのは興味深いところです。
まず、宝石はプレイエイドでしかないというところです。ボードのコーナーや中央と自分の辺を結ぶのが目的であり、宝石を動かして導くのが目的ではないのです。ボードを見れば誰がどの宝石を獲得したかはわかります(青だけは覚えておく必要がありますが)。2人ではついたては使いませんが、3人以上でも厳密に言えばついたては不要です。
驚くべきことに、インターネット上のプレイレポートの多くでは、ゲーム開始時は中央のタイルに隣接する場所から宝石を移動させるようにタイルを置いていますが、これはまったく無意味なことです。もっとひどいレビュービデオになると、タイルが置けるのはあたかも既に置かれたタイルの隣だけと説明されています(完全に間違いです)。インディゴでは経路の長さは問題にならないので、宝石を移動させて自分の辺の方に近づけた、というのは幻想でしかありません。では、どこにタイルを置くのが良いのでしょうか? 自分の辺から伸ばすか、相手の辺を封じるかのどちらかです。ただし外周は繋げないという制限があるので、焦点になるのは外周の1つ内側の2列目なのです。よって慣れたプレイヤー同士だと、この2列目から置くことになるでしょう。それぞれの辺で6つの出口があります。この6つをできるだけ活かすように、広げるようにするのです。あるいは相手の辺の出口同士を繋ぐのです。出口は全部で36あり、宝石は12しかないのです。よって、少なくとも24の出口は出口同士が繋がって潰れることになります。宝石同士が衝突によって消滅すれば、さらに多くの出口が潰れるでしょう。
これまでは、2人プレイだとルールにも掲載されているオフィシャルバリアントの手札2枚(1枚配置して1枚補充する)を使っていたのですが、今回は、それに加えて完全情報バリアントというのを考案して試してみました。5種類のタイルはすべて偶数枚なので、それをきっちり半分に分けて、各プレイヤーはタイルの種類別に5つの表向きの山を作ります。そこから毎回任意のタイルを配置するだけです。これが非常にキリキリとして面白い。相手を選ぶと思いますが、インディゴが2人用アブストラクトとして生まれ変わったという感じです。
1戦目は手札2枚で、2戦目は完全情報で遊びました。それぞれの序盤が最後の2枚の写真です。どちらも非常に熱い戦いでしたが、完全情報だと自分のタイルの残りをコントロールするという別の難しさもあり、自分はこちらの方が好みかもしれません。
1戦目(手札2枚):自分 9、ナグナツ 2
2戦目(完全情報):ナグナツ 9、自分 7
カリスト Callisto (ユニバーシティーゲームズ版)
(プレイ時間 20分)
最後は持ち込んだ「カリスト」を1回だけ遊びました。本来は3回やって合計を競うのですが、時間の都合で1回だけです。「ブロックス」に似ているという指摘の通りなので、さしずめ「ブロックニ」とでも呼ぶべきゲームだと思いますが、ビッグファイブ(クニークル)がクワークルとかなり異なるように、カリスト(ブロックニ)もブロックスとかなり異なります。カリストは辺を接するので妨害しやすく、常に死と向かい合わせといった感じです。また3つめの塔のルールもよくできています。これを使うべきか使わないべきか、そして使うならどのタイミングか、というのはかなり難しい選択です。
結果(1回のみ):自分 0(勝利)、所 6、中島 10
終了後は食事会に行きました。そこで「フリップフロップ」のコンポーネントで遊べる「フリップフォー」を2回遊びました。ネスターゲームズから廉価版とデラックス版が発売されています。あっという間に負けてしまったので、これはまた次回対戦したいです。
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