草場さんの家でアブストラクトゲームを遊ぶ会ASGAの第2回目を行いました。
ヤバレード Yavalade
(説明 5分 プレイ時間 各5-15分)
「ヤバラス」の派生ゲームで3人専用です。自分の右隣りのプレイヤーの色と自分の色を両方含んだ5目を作ることが目的です。この両方含まなければならないというところがミソで、自分が置いた石はすべて左隣りのプレイヤーを助けることになるのです。つまり右隣りのプレイヤーを止められるのは自分だけというわけです。言葉で書くとややこしいですね。各プレイヤーの前に、自分の色を上にして自分が使うべき2色を置いておきます。
3人のアブストラクトは本質的に2-1の構造になりやすいのでかなり作るのが難しいと思われますが、この「ヤバレード」はその問題をうまく解決しているように思えました。草場さん、ナグナツさんとの3人プレイで4回遊びました。面白かったのが最初の3回は中央から打っていたのですが、ナグナツさんが「中央に打つと次のプレイヤーが有利すぎるよね」と言い始めて、4戦目はみんな警戒して端から打つようになったところです。本来はこうなるべきだという気がしました。何にせよ、また遊んでみたいゲームです。
結果
1戦目:草場
2戦目:ナグナツ
3戦目:草場
4戦目:草場
ヤバラス Yavalath
(プレイ時間 各5-20分)
続けて3人で「ヤバラス」です。2人ルールとの違いは、次のプレイヤーの4が止められるならたとえ自分が3を作って負けても止めなくてはならないというところです。3を作ると脱落します(それまでに打った石は残りますが、手番はもうありません)。誰かが4を作るか1人以外全員が脱落したら終了です。これも「ヤバレード」とは別のやり方でなかなかうまいこと多人数アブストラクトの問題を解決しているように思えます。「ヤバラス」を持っている方はぜひ遊んでみると良いでしょう。これも草場さん、ナグナツさんと3人で3回遊びました。写真でどの色が勝ったか分かるでしょうか?
結果
1戦目:自分
2戦目:ナグナツ
3戦目:ナグナツ
アッパーハンド Upper Hand
(プレイ時間 各5-10分)
続けて「アッパーハンド」です。ナグナツさんによれば偶数路盤(6x6や8x8など)は中央に中立が無く先手は後手の真似ができてしまうので、それが必勝手なのではと言うことです。それを検証する意味も込めて、まずは初めてとなる6x6で遊びました。中央にピラミッドができたあとは点対称的に打っていきます。ナグナツさんの予想通り、これで勝ててしまえそうです。
続いての7x7では初めて中央の玉をなくしてパイルールを使ってみました。ナグナツさんが先手で中央の脇に打ってきたので、そのまま後手を受け持って中央に打ちましたが、実力の差がありすぎてあまりパイルールなど関係なかったみたいです。でもパイルールは機能していると思います。写真は3戦目で、自分が「アクロン」を遊んでいる時にキノさんとナグナツさんが遊んだ5x5です。
結果
1戦目(6x6):ナグナツ 勝利、自分 敗北
2戦目(7x7):ナグナツ 勝利、自分 敗北
3戦目(5x5):ナグナツ 勝利、キノ 敗北
アクロン Akron
(プレイ時間 各5-30分)
次に「アクロン」です。このゲームはマーブルを使うゲームのなかでは、下のマーブルを抜いて上のマーブルをスライドさせて落とす動作があり、またヘックスのように対辺を結ぶコネクションゲームということもあってかなり好きなゲームです。
まずは草場さんと3回遊びました。1戦目はポカミスで逃したものの、2、3戦目は連勝しました。最後に1回ナグナツさんを遊び、これは30分もかかった激戦でした。
結果
1戦目:草場 勝利、自分 敗北
2戦目:自分 勝利、草場 敗北
3戦目:自分 勝利、草場 敗北
4戦目:ナグナツ 勝利、自分 敗北
ヴォロー Volo
(プレイ時間 各20分)
鳥の群れをテーマにしたゲームです。鳥の群れは分裂させてはならないというのは同作者の「アバンデ」らしいところです。ちゃんと相手を止めないとあっという間に終わってしまいます。2戦目は自分がボードを分裂させてナグナツさんの群れを除去して勝ちました。こういう勝ち方もできるのですね。
結果
1戦目:ナグナツ 勝利、自分 敗北
2戦目:自分 勝利、ナグナツ 敗北
アバンデ Abande
(プレイ時間 30分)
続けて、地味だけど面白い「アバンデ」です。今回は一直線上にならずに広がっていくという奇妙な展開で翻弄されてしまいました。終盤に良い手を幾つか打たれて1点差での敗北です。思ったよりも色々な展開があるゲームなのかもしれません。
結果:ナグナツ 17、自分 16
マーゴ Margo
(プレイ時間 20分)
「マーゴ」はマーブルを使った碁です。呼吸点はボード上にしかないことや、相手のマーブルが上に乗っている場合は取られずにゾンビとして残るなど面白い要素がたくさんあります。かなり変わった思考を要求されるのですが、専門書も出ておりとても良いゲームだと思います。
ナグナツさんと1戦している間に、隣りではキノさんと草場さんが「マーゴ」の4x4バージョンである「スパーゴ」を遊んでいました。最後まで気の抜けない戦いで、5目差で負けてしまいました。
結果:ナグナツ 31、自分 26
スプライン Spline(渋 Shibumi より)
(プレイ時間 各3分)
「渋」のゲームシステムで遊べるゲームでは一番簡単なゲームです。順番にマーブルをボード上か2x2の土台の上の任意の場所においていき、NxNの平面でN連を作れば良いのです。たったこれだけですが、以外と考えさせられます。3x3の真ん中が強そうですが、ここを取らせて勝つことができました。
結果
1戦目:自分 勝利、草場 敗北
2戦目:草場 勝利、自分 敗北
スプライン プラス Spline+ (渋 Shibumi より)
(プレイ時間 5分)
「スプライン」にマーブル移動の要素を加えたゲームです。マーブルを置く代わりに、既にあるマーブルを任意の場所に動かせます。このとき、上のマーブルが落ちることもあります。落ちたマーブルの上には移動できません。移動すると自分のマーブル数が少なくなるのですが、終盤に2回ほど移動させて勝ち切るのがスパイスが効いています。
結果:自分 勝利、草場 敗北
ツァール Tzaar
(プレイ時間 15分)
ギプフシリーズの最終作で、おそらく一番の傑作だと思われます。手番には相手のスタックを取って、それからもう一度取るか自分のスタック同士を重ねるか、のどちらかを行うというシンプルさです。まずは草場さんとキノさんが対戦し、そのあと自分がキノさんとあそびました。
結果:キノ 勝利、自分 敗北
ロット Lot
(説明 5分 プレイ時間 各5-10分)
2層になっている三目並べです。まずは初プレイの草場さんと遊びました。なぜか草場さんと対戦するとポカミスで負けてしまいます。続けてキノさんと2回遊んで1勝1敗でした。このゲームも慣れるまでに少し時間がかかりますが、慣れてくると色々なはめ技がありますね。
結果
1戦目:草場 勝利、自分 敗北
2戦目:キノ 勝利、自分 敗北
3戦目:自分 勝利、キノ 敗北
オンブル Hombre
(説明 15分 プレイ時間 75分)
最後はアブストラクトではない伝統カードゲームの「オンブル」です。非常に複雑なランクを持った3人専用ゲームで、2対1でトリック数を争うのですが、トリック数は個人ごとというのが独特です。なお以下のルールは簡易ルールです(とは言っても十分難しいのですが)。
使用するカードは8ー10を除いた40枚です。ランクは
黒スート:K>Q>J>7>6>5>4>3>2
赤スート:K>Q>J>A>2>3>4>5>6>7
ですが、切り札の場合は
黒スート:SA>2>CA>K>Q>J>7>6>5>4>3
赤スート:SA>7>CA>A>K>Q>J>2>3>4>5>6
となかなか複雑です。
黒のAは常に切り札に属し、SAをスパディール、CAをバストと呼び、それぞれ1番目、3番目に強い切り札です。なお2番目に強い切り札の2/ 7をマニラと呼び、通常はそのスートの最弱であるので要注意です。これら三強はマタドールと呼ばれ、シングルトンの場合に限り、より低い切り札のリードをフォローする義務がありません。なお赤のAは切り札であるかに関わらず、そのスートで4番目に強いカードです。切り札の場合はポントと呼ばれます。
40枚を3枚ずつ3回の計9枚ずつ配り、残りの13枚はウィドゥとなります。デクレアラーを決めるビッドはディーラーの右隣りから(このゲームは反時計回りに行うので)で、シンプル<ボルテレタ<ソロの3種類のビッドを言うことができます。次の人がオーバービッドしたら、イエスといってかえすことができます。スカートのビッド方式に少し似ています。
シンプルが基本のビッドで、デクレアラーは切り札を指定してから好きな枚数をウィドゥと交換します。他のプレイヤーもウィドゥが残っている限り交換できます。ソロはデクレアラーだけが交換できませんが勝利点が高くなります。難しいのはボルテレタで、これは切り札を指定できません。なんとターンアップカード(山札のトップカード)が切り札なのです。
9トリックで単独最多を取ればサカドと言って勝利します。つまり4トリックだけでも残りが3ー2トリックというように分かれていれば良いのです。この場合はポットのチップをすべて獲得します。このときソロならばさらに2枚ずつを他のプレイヤーから受け取ります。同数最多の場合はプエスタといってポットにあるお金を倍にしなければなりません。負けてしまったら、コディールといって最多トリックを取ったプレイヤーにポットと同額を支払います。前のディールがプエスタでない限り、次のディール開始前に全員1枚ずつをポットに入れます。なおデクレアラーが最初の5トリックを連続で取りポットを取ったあと、ボレと言って残りの4トリックを取ると宣言できます。成功なら各プレイヤーから5チップずつもらい、失敗なら5チップずつ支払います。このときトリックを1つでも取ったプレイヤーには10チップを支払うのです。
なかなかルールが複雑ですが、遊んでみるとこのゲーム特有の面白さがあって楽しめました。12ディールくらい遊びましたが、カード運もあり、ソロを成功させることができました。シンプルと言ってしまい、ボルテレタを返されてしまうとそこでイエスは言えてもソロとは言えないというルールがつらいです。最初からソロと言った方が良いこともあるのです。
今度は正式なルールでも遊んでみたいです。
結果:自分 46、キノ -11、草場 -35
第1回から随分と時間が空いてしまいましたが、漸く第2回ができました。これ以外には「ゴキブリキッチン」「ルトルック」「オナガー」などが遊ばれていました。第3回が楽しみです。なお、以前存在した旧ASGAの貴重な資料をナグナツさんからお借りしました。これもいずれ整理して隠れたアブストラクトゲームの名作を見つけたいものです。
草場純
第二回ASGAⅡができてとてもよかったです。次回はカワサキさんにも来てほしいですね。
今回のゲームはどれもよかったです。アブストラクトも不毛な時代を越え、いよいよ豊饒の時代がやってきたと期待させられます。
なお、最後のオンブルは、わざと負けてあげたのですからね。そこのところくれぐれも誤解のないように。
草場純
「多人数アブストラクトボードゲームは成立しない」というテーゼがあります。それは「重心原理」に依ります。簡単に言うと、「一人が勝ちそうになると他の二人が邪魔をするので、勝負はつかない」というのが、重心原理です。つまり形勢が傾くほど、重心に戻そうという復元力が働くのです。(「重心原理」の提唱者は南雲さんです。)
ですから、3人ゲームは何らかの仕掛けをしないと成立しないのです。(アブストラクトにおいては3人からが多人数です。) 例えばダイスやカードなどのランダムな要素を入れるとか、どうしても読み落とすほど複雑にするとか。ところがヤバレードは、だれにとっても1人味方、1人敵みたいな状況を創って、それを回避しているのです。うまい方法です。
しかし、ゲームは必然的に逆型にならざるを得ません。つまり、いい手を打つ戦略ではなく、悪い手を打たない戦略になるのです。
一般に逆型のゲームは、順型より難しいゲームになります。互いにツークツワンクに陥いれようと画策しあうわけですから。だから、終盤までもつれがちで、序・中盤が、たるいゲームになやすいのです。するとこの5路盤は大きすぎます。今度4路盤でやってみましょう。
草場純
前のコメントはヤバレードのものです。
次は3人ヤバラスですが、同様のことが言えます。こちらはもう少し微妙なところもあります。結局は二人ゲームに回帰するからです。とは言え、際どく成立しているような気もします。
これも4路盤の方がいいかも知れませんが、それではだめかも知れません。試してみたいです。
草場純
アクロン
これはとてもいいゲームです。
一般に連結系のゲームは鋭くなりすぎるきらいがあります。鋭いというのは私の用語では「収束性が高い」ということです。平たく言うと「必勝法が見つかり易い」ゲーム、「一手の悪手が致命的で、挽回できにくい」ゲーム、「形勢が一気に傾く」ゲームです。そしてヘックス(というゲーム)に典型的にみられるように、連結系のゲームは必然的に鋭くなりがちなのです。
アクロンの面白いのは連結系でありながら、鋭さが緩和されているということです。鋭いゲームにはその良さがありますが、あまり鋭いとより初期に悪手を打った方が負けとなってしまいます。更に行くところまで行くと、初手で決まるニムのようなゲームになってしまいます。先手が打つと後手が「ありません。」(笑)
アクロンも連結系ですから、本質的には先手必勝なのだと思いますが、そこまでの鋭さは感じません。形勢の変化も感じます。もう少し練習して強くなりたいゲームです。
草場純
オンブル
オンブルは古いゲームですが、現在でもスペインで老人たちに遊ばれていて、トレシヨと呼ばれています。ルールは赤桐さんのゲームファームで分かります。
http://www.gamefarm.jp/modules/gamerule/page.php?game=tresillo.html
一読して分かると思いますが、ビッドのところがとても複雑です。このビッドの部分を簡単にしたのが、モンブルです。これは本来のオンブルと同じかどうか分からないので、私が仮につけた名で、普通に遊ぶならオンブルと呼んでもかまわないし、十分面白いです。
ただし、トレシヨのルールを読んで一点だけ直した方がいいと思ったのは、以下です。コディールのときは、次のアンティはオンブルの人が(同額を)出します。ポットは、プエスタ同様、倍になるのですね。他のプレーヤーは、アンティは要りません。つまり全員1チップずつアンティを出すのは、直前がサカドのときだけです。
けがわ
草場さん、たくさんのコメントと考察をありがとうございます。
ヤバレードと3人ヤバラスは、どちらも危ういながらも多人数アブストラクトを成立させようとしていて興味深いですね。4路のヘックスヘックスボードだと37ヘックスなので大分少なくなりますね。ヤバレードは5連を競うので辺での攻防が皆無になってしまうのはどうかとも思いますがどうでしょうか? 5路のヘックスヘックス(ヤバラスボード)だと61ヘックスですが、そんなに冗長とは思いませんでした。
アクロンは素晴らしいゲームです。マーブル落とすというのが秀逸です。ありそうで見たことが無かったメカニクスです(渋も同様のメカニクスを使っていますが)。もうひとつのマーブルゲームであるマーゴはどう思いましたか?
オンブルは草場邸アスガでのトリックテイクメニューとして楽しめました。前回のミゼルカよりはこちらの方が自分は好みです。
草場純
マーゴ
「『マーゴ』はマーブルを使った碁です。」と書かれていて、確かに活路を奪う(呼吸点をふさぐ)という意味では、囲碁そのものですが、感覚は相当囲碁と違います。囲碁で良い手が良い手ではなく、悪い手が悪い手とは限りません。特に死んでも残る石というのが独特で、評価するのが難しく、なかなか慣れません。見かけによらず難しいゲームで、どこが急所なのか、私にはまだ掴めていません。
草場純
ツァール
これもいいゲームです。私は実はあまりギプフシリーズは評価していないのですが、これはいいですね。シリーズから外された某ゲームを除くと、確かに一番いいでしょう。
駒の種類と、位置と、勢力(スタック)と、手数がうまく絡んで、よい仕上がりになっています。盤の形も意味があるし、駒の重なりの手触りもよく、その意味でもよいゲームです。
草場純
スプライン
実は私はこれが一番気に入りました。N雲さんはあまり評価していませんでしたが、禁手なしでかつ簡単には先手必勝にならない五目並べというのは貴重です。n段目がn目というのもとても論理的。
私は5路盤がよいと思ういます。もちろん1段目は5目を並べないと勝ちになりません。
けがわ
マーゴは確かに碁とはかなりプレイ感覚は異なります。後日紹介したASGSではポンヌキ碁のルールと言われました。そのときはポンヌキというのを知らなかったのですが、つまり石の取り合いに争点を置いた碁ということみたいですね。相手のマーブルの上に乗ると自分は生きやすいのですが、相手のゾンビを作ってしまいます。ゾンビだと一眼でも問題ないというのも面白いですね。
ツァールはギプフシリーズから一歩抜け出したような感じの完成度ですね。自分はギプフシリーズは結構好きですが、タムスク=ツァール>インシュ>デュボン>ゼヘツ>ギプフ>ピュンクト といった感じでしょうか。もちろんプレイを重ねればこの印象は変わるかもしれません。
スプラインは渋いゲームですね。ミニマルで思いのほか深さが隠されています。渋(しぶみ)シリーズは30以上もゲームがあるので、遊ぶのが楽しみです。今度5路盤でやってみましょう。