アブストラクト・クニツィア5

ラン Run
(説明 5分 プレイ時間 実時間 20-45分 記載時間 未表記)
Run-boxfront.JPG「ラン」は1992年にFANから、そして1993年にアバクスシュピールから出版されました。残念ながらFANのものはまったく情報がないので分からないのですが、ここではアバクスシュピール版を紹介します。

背景
カウボーイと牛をテーマにしたゲームです。テキサスとは明記されていませんが、舞台はテキサスと思われます。プレイヤーはカウボーイを使って自分の牛を草原(プレーリー)の反対側に誘導するのが目的です。ボードの反対側には街があり、そこで売るために多くの牛を誘導するというストーリーなのです。

Run-box-slide.JPGコンポーネント
アバクスシュピールは以前アバクス・エクスクルーシブ Abacus Exclusiv という木箱に入ったアブストラクトゲームのシリーズを出しており、有名なものではソウシーの「ラインズ・オブ・アクション Lines of Action」やサクソンの「チェイン・リアクション Chain Reaction」がこのシリーズに含まれます。シガレットケースのように木箱の外側は紙で包まれており、高級感があります。しかし構造上、木箱の蝶番がこの紙の邪魔をするので、普段はこの紙は外しておくことになるでしょう。

木箱の中は浅い仕切りになっており、各プレイヤーのコマが入る場所とボードを丸めていれる場所に分かれています。コマは白と茶色の木製で、それぞれ牛7匹とカウボーイ5人の12個、合計24個です。素朴で可愛らしいコマです。ボードはビニール製で、緑色は草原(プレーリー)を表しています。ボードにはヘックスが 6-5-6-5-6-5-6と7列、計37マス描かれています。

Run-inside-the-box.JPGルール概要
各プレイヤーは自分の色(白か茶色)の牛7匹とカウボーイ5人を受け取ります。ボードの一番近い6マスをそれぞれのスタート列と呼びます。ボードには何もない状態から始め、スタートプレイヤーを適当な方法で決めます。スタートプレイヤーの初手番では自分のスタート列のマスのどこかに牛かカウボーイのどちらかのコマを置きます。以降の手番では、牛のアクションとカウボーイのアクションを好きな順番で両方必ず行わなければなりません。

牛のアクション
手元の牛を自分のスタート列のマスに置くか、ボード上の牛を前方の空いているマスに1マス進めます。牛は他のコマがあるマスへは進めません。自分から最も遠い列にいる牛は動かすことによってボードの反対側にたどり着いたことになり、脇によけておきます。この牛はゲーム終了時の得点となります。

カウボーイのアクション
手元のカウボーイを自分のスタート列のマスに置くか、ボード上のカウボーイを1マス好きな方向に動かします。もし動かした先に相手のコマがあれば、そのコマは捕獲されゲームから除外されます。

3つの制限
1:まだ手元にコマがある場合には必ずどちらかのアクションで新たなコマの配置をしなければなりません。つまりどちらか1種類のコマしか手元にないときにはその種類のコマはボード上で動かせません。遅くとも12手番終了時には手元に自分のコマは残っていないはずです。
2:もしアクションができなければ、ボード上の自分の該当する種類のコマを1つ選んでゲームから除外しなくてはなりません。
3:もしプレイヤーがどちらか1つのコマしかなければ対応する1アクションしか行いません。

こうして、すべての牛が捕獲されるかボードの反対側にたどり着いたらゲーム終了です。より多くの牛をたどり着かせたプレイヤーの勝利となり、たどり着いた牛の数の差が勝ったプレイヤーの得点となります。あらかじめ決めておいた得点(例えば7点)を勝ち取るまで何度も遊ぶという方法もあります。(筆者注:このときは先手を交互に行うと良いでしょう)

Run-components.JPG感想
クニツィアのアブストラクトではマイナーなタイプに入るチェス系統のゲームです。ヘックスボードを使い、コマを2種類に絞ったところや、動かせなくなるとコマを除去しなければならないなど収束制のあるルールが良いです。序盤の配置やゲーム中でもうっかりすると手詰まりになってしまう辺りの感覚は「ピラミッド Pyramido」に似ています。また牛をカウボーイで草原の反対側に誘導させたり、牛同士が向かい合って動けなくなってしまうさまがよく表されています。先手有利な部分も先手の第1手のルールで軽減されており、バランスは良いと思います。正しいルールを手に入れるのに手間取ったこともあり、個人的には余り得意ではないチェス系統のゲームということもあって、まだ10回ほどしか遊んでいません。どのコマも1マスしか動けないので、少々地味な感は否めませんが、クニツィアのゲームにしてはテーマとマッチしており、再販されても良いのでは? と感じました。

Run20120313.JPG考察
カウボーイは全方向に動けるし隣りの相手のコマを取れる強いコマですが、得点になるのは前方にしか進めない牛です。カウボーイで牛を守りつつ進めていくのが基本で、カウボーイの数に差がつくと勝つのは難しいでしょう。よって序盤は相手に牛を取らせて自分はカウボーイを取るというのが理想です。それでも盤面によってはカウボーイで相手のカウボーイを取るべきか、或は牛を取るべきか迷うこともあります。将棋を指す方には「歩と銀しかない将棋のようだ」という感想を頂きましたが、非常に的を得ています。

結論
クニツィアのチェス系統のルートとも言えるゲームです。後年に出版された、数字比べの要素も含んだチェス系統の「ヌバ」が好きならこのゲームもおすすめです。

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