TSRはアメリカの出版社で、ダンジョン&ドラゴンなどのロールプレイングゲームを作っていますが、少しだけアブストラクトゲームも作っていました。1986年から88年にかけての4作で、どれもスタイリッシュなプラスチック製のパッケージです。ときどきボードゲームギークなどで話題になるのは最初の2作「チェイス」と「ステッペ」で、自分もこの2作は以前に何度か遊んだ経験があります。この日はシミーズさんの協力もあって、年代順に4作すべてを遊ぶことができました。なお最後の「クロッセ」だけはダイスを振るので完全情報ゲームではありません。
チェイス Chase
(プレイ時間 55分)
TSRアブストラクト第1弾。ダイスを使う完全情報ゲームです。ダイスは振らずにダイス目が移動力のコマとして使うのです。各自9個のダイスを自分の側に左から1、2、3、4、5、4、3、2、1の目を上にして配置してスタートです。つまり移動力は合計で25あり、これはダイスの数が増えても減ってもゲームを通じて変わりません。この合計25移動力を保てなくなったとき、つまり自分のダイスが4つまで減ったら敗北です。
手番には自分のダイス1つを目の数丁度だけ好きな方向に進めます。他のダイスやボード中央のチェンバーマスは飛び越せません。ボードは左右で繋がっており円筒状になっています。上下ではダイスはバウンドします。到達したマスに相手のコマがあれば捕獲、自分のコマがあれば同じ方向に1マス押します。連鎖で2つ3つと押されることもあります。捕獲されたら、ダイスの最も小さい目を増やして合計が25になるようにしなければなりません(目を6にしても足らなければ次に小さな目のダイスを増やします)。
移動した結果、ダイスがかっきりチェンバーに到達すると自分のダイスが1つ増えます。元のダイスがあった方向のチェンバーに隣接する2マス(矢印の矢にあたる2マス)に元のダイスと新しいダイスをそれぞれ出目を半分にして配置します。6だったら3と3、5だったら3と2というようにです。最初から1つスペアのダイスがあるので最大10個まで増えるのです。
移動の代わりに自分の隣り合う2つのダイス同士で目を調節できます。これはかなり有効な手段で、自分のダイスをまとめておくとかなりフレキシブルな戦いができます。
自分は以前何度か遊んだことがありますが、シミーズさんは初めてです。最初は円筒状のボードと相まって、動きに慣れないので見落としが多くなりがちですが、慣れてくれば色々と面白い手が打てます。目の調節やチェンバーなど独特なルールが魅力ですが、今回久し振りに遊んで少々収束が悪いのかなあと思いました。
結果:自分 5、シミーズ 4 (手持ちダイスの数)
ステッペ Steppe
(プレイ時間 各10-15分)
TSRアブストラクト第2弾。自分のタイルを置いて得点を競います。各自1x1、1x2、1x3のタイルをそれぞれ15、5、3枚持ち、加えてニュートラルの1x1の白タイルを3枚持ちます。これを順番に1つずつ5x5のボードに配置していくのです。1層目が終わったら2層目に、2層目が終わったら3層目に進みます。2、3層目では自分のタイルかニュートラルタイルの上にしか置くことはできません。唯一の例外は1x3の長いタイルで、これは真ん中の1マスは他のプレイヤーのものでも構わないのです。またニュートラルタイルはどのタイルの上にも置けるので、後半で活躍します。3層目が埋まるか途中で両プレイヤーが手詰まりになったらゲーム終了です(1人だけ手詰まりの時はもう1人が置き続ける)。
得点は1x1が1点、1x2が5点、1x3が10点ですが、2、3層目だと2倍3倍となります。よって1x3はできるなら3層目に置きたいのですが、置けなかったら無駄ですし、サドンデスでゲームが終わる危険もあります。
面白いことにそれぞれの層を終わらせたプレイヤーから次の層を始めます。これは非常に有利で、1x1や1x3を置いている限り(そしてパスが無い限り)はその層を始めたプレイヤーが終わらせることになりますが、1x2がでるとこの先攻後攻が逆転します。このちょっとしたニムの要素も面白い攻防を生み出しています。
短時間なので3回か遊びましたが、1戦目と3戦目はサドンデス終了でした。当然ですが、自分が勝っているのならば終わらせた方が良いわけです。
結果
1戦目:自分 71、シミーズ 48
2戦目:自分 145、シミーズ 134
3戦目:自分 53、シミーズ 51
ケイジ Kage
(プレイ時間 各5分)
TSRアブストラクト第3弾。8x8のボードに各自の鳥を表す四角い赤青のコマ(カーディナルとブルーバードだそうです)、それに48ある柵という内容物です。ボード中央に斜めに2人の鳥を置いてスタートです。目的は相手の鳥を柵で囲むこと。手番では自分の鳥を1マス動かすか、柵をマス目の間に1本置きます。囲碁などと異なり、ボードの端にも柵を置かないと囲ったと見なされません。2人の鳥両方を囲ってもそのプレイヤーの勝ちとなります。
これも非常に短いゲームですが、ちょっと欠点があります。2人の鳥が近くにいると構造的に引き分けになってしまうのです。「2人の鳥両方を囲ったら負け」としたほうがルール的には良かったのではと思います。
結果(計8戦)
自分 4、シミーズ 2、引き分け 2
クロッセ Crosse
(説明 10分 プレイ時間 各15分)
TSRアブストラクト第4弾。10x10のインターナショナルチェッカーボードの中央に、4x4の正方形のエリアがあります。この真ん中の2x2は盤外扱いで、それを囲むように「クロッセ」と呼ばれる12マスの輪があります。使用するマスはクロッセ以外はチェッカー同様に交互ですが、クロッセでは12マスすべてという変則的な構成です。
各自、16個のコマを持ち、チェッカーのように置きます(1つはクロッセ上に置きます)。目的は自分のコマをすべてなくすことです。チェッカーのようにコマを強制的に取らされるのですが、取れない時はダイスを振ってその数だけ動かなければなりません。ダイスはF1、F2、F3、B1、B2、B3の6面で、前 Forward か後ろ Backward に1-3進めるのです。クロッセ上では時計回りが前、反時計回りが後ろという扱いです。またクロッセにつながる4カ所の真横の動きは前でも後ろでもどちらとしても扱われます。動くとき途中にコマがあっても構いません。動く最終的な場所があいていれば良いのです。
クロッセの四隅の4マスにすべて自分のコマを置くと自分の最後列のコマをすべて除去できます。4マス占領を保っている間は、最後列に移動させることでも除去ができ、さらに4マス以外すべてをなくしても勝利となります。
ダイスを振るので完全情報ではありません。結果としてはダイスを使ったチェッカーのミゼール変形といったところです。冗長で動かせずにパスになることも多く、あまり良いゲームとは思えません。
結果(残りコマ数)
1戦目:シミーズ 0、自分 9
2戦目:自分 0、シミーズ 8
ビッグ ファイブ Big Five (アミーゴ携帯ポーチ版)
(プレイ時間 各17分)
シミーズさんのリクエストで持参したクニツィアのクワークルこと「ビッグファイブ」です。個人的には2人が少しは長期的戦略で手札のやり繰りなどもできて、一番面白い気がします。先手後手を変えて2回遊びました。テーブルスペースが少々狭かったのでカードを重ねなければなりませんでしたが、なんとか遊べました。カードを小さな正方形にした「ビッグファイブミニ」とか「ビッグファイブトラベル」をアミーゴには期待するところです。あるいは少々豪華にカルカソンヌくらいのサイズの厚手のタイルにするというのも良いかもしれません。
結果
1戦目:自分 0、シミーズ 9
2戦目:自分 0、シミーズ 8
クラミ Kulami
(プレイ時間 各20分)
最後に2011年のシュテフェンシュピールでのベストゲームと思われる、エリアマジョリティー的2人用アブストラクトゲームの「クラミ」です。1x2、1x3、2x2、2x3の4種類の大きさの17枚のボードを10x10に収まるように自由に組み合わせて場を作ります(写真は2戦目で点対称にしてみたものです)。手番には自分のマーブルを1つ置くのですが、スタートプレイヤーの最初の手番を除いて制限があります。直前に相手が置いたマーブルの縦横の列にしか置けないこと。直前に相手が置いたマーブルと自分が置いたマーブルのボードには置けないことです。すべてのマーブルを置いたとき、またはどちらかのプレイヤーが手詰まりになったら終了です。17枚それぞれのボードで、より多くのマーブルを置いたプレイヤーが、ボードの大きさを得点します。マーブルが同数ならば誰のものにもなりません。マーブル配置の制限が絶妙で、よくこんなルールを考えたなあと感心します。シミーズさんにも好評で3回遊びました。色々とバリアントがあるので試してみたいところです。
結果
1戦目:シミーズ 26、自分 22
2戦目:自分 18、シミーズ 16
3戦目:自分 20、シミーズ 17
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