アブストラクト・クニツィア2

プリズマ Prisma
(説明 2分 プレイ時間 実時間 10-15分 記載時間 10-15分)
PrismaComponent.JPGプリズマはプロリグノから1991年に発売されました。ラベルにはArtikel Nr. 102 と記されており、このシリーズではコンプリカに続く2番目のゲームという位置付けだと思われます。

背景
「プリズマは彼の著書『サイコロとカードを使った新しい戦略ゲーム』ではソノ Sono という名前で紹介されている。今回、ルールを見直したのち、プリズマというタイトルで発売することになった。」 と英訳には書かれています。どの辺りにルールの改変があったのかは気になるところです。また、以前アブストラクトゲームズ16号(2003年冬の号) Abstract Games Issue 16 Winter 2003 にルールも含めて紹介されたこともあります。ただし表記はプリズマ Prisma ではなくプリズム Prism でしたが、これはドイツ語が英語になっただけで意味は同じです。

コンポーネント
外箱については以前紹介したコンプリカ同様のピンク色の正方形の箱です。箱の横にゲーム名が書かれたラベルが貼ってあります。木製のボードは縦5列×横5列で合計25マスあります。版によって2種類のボードがあり、黒インクでマス目が描かれているものと、コマがすっぽり入るようにマス目が円形にくり抜かれているものがあります。コマはコンプリカ同様の円形で赤、水色、黄色、緑、紫の5色が各5つずつです。その他にコマを保管するための白、または紫の袋が付いてきます。

Prisma1.JPGルール概要
1人のプレイヤーが縦5列、もう1人のプレイヤーが横5列を受け持ちます。自分の受け持つ列になるべく同色のコマを数多く配置するのが目的です。なお、このゲームではボードに置かれたコマは共有で、どちらのプレイヤーにも属しません。

ゲームの前に各プレイヤーは5色のコマを1つずつ合計5個持ちます。残りのコマ(各色3つ)は色別に分けてボードの横に置いてストックとし、ボードは何も置かない状態で始めます。手番には手持ちのコマを空いている好きなマス目に置いて、ストックから好きなコマを1つ補充するだけです。なおストックがなくなったら(16手目以降)補充はせずに置くだけとなります。こうして全てのコマが置かれて25マス埋まったらゲーム終了、得点計算をして勝敗を決めます。

各列(縦5列、横5列)ごとに個別に点数を計算します。点数は、列に同色のコマがいくつあるかで決まります。

同色2個 1点
同色3個 3点
同色4個 6点
同色5個 10点

これらは重複して得点することも可能です。例えば、赤、赤、緑、赤、緑という列は赤で3点、緑で1点の合計4点となります。

なお英訳では3つの場合は2点となっていますが、原文とアブストラクトマガジンでは上記のようになっているのでおそらくこれは間違いだと思います。最初3個で2点のルールでプレイしていたのですが、やはり3個で3点の方がゲームとして面白いのと、1、3、6、10という三角数列の方が美しいということでそちらのルールでもっぱらプレイしています。

感想
30回近くプレイする機会がありました。こんなに簡単なルールなのですが、ゲームとしてはよくまとまっています。ボード上ではコマ間の距離の概念がまったくないのが新鮮ですが、反面そのせいで手番での選択肢はそれほど多くないです。それを嘆くか、収束していてわかりやすいと取るかは個人の好みだと思います。面白いのは補充のルールです。これでお互いに牽制しあうことが出来、ゲームに深みを与えています。それでも、実際プレイを重ねてお互いある程度コツがつかめてくると同点になってしまうことが多かったので、ゲームの奥深さという意味ではちょっと物足りないかもしれません。

手番での好きな色のコマを置いて好きな色を補充するという部分はフリンケピンケを思わせます。また、2次元のグリッドの縦と横で点を取るメカニクスはジュピターや市場のお店に受け継がれています。とくにジュピターには距離の概念がないので、プリズマの直系のゲームといえるかもしれません。

Prisma2.JPG考察
ボード上の距離感を全く無視した珍しいゲームです。例えばゲーム中に2つの縦列(または横列)を入れ替えても状態は全く同じです。そこが最初は飲み込みにくいかもしれません。それを踏まえて可能性を考えてみます。

ゲーム開始直後はボード上ではどのマスも全く等価(中央も角も同じ)なので、初手では補充するコマを置いたコマと同色にするか異なる色にするかの2択です。次手は置く場所が3つ(初手のコマと同列で縦、同列で横、またはそれ以外)と置くコマが2-3種類(初手のコマと同色、相手が2つ持っているコマと同色、またはそれ以外)で計6-9択に見えますが、現実的には初手のコマに対して自分の列に同色を置くか、または相手の列に異なる色を置くかの2択になると思います。ただ補充は最大4択となり、どの手もそれぞれメリットがあるので、ここからゲームが広がっていくのです。後手の1手目でこの状態なので、先手、後手による有利不利はあまりないように思えます。

中盤では相手をブロックすることと自分を伸ばすことのバランスをとるのが難しいです。特に各列での空白の数が大事で、どんな可能性があるかを常に見極めていかなければなりません。終盤では残った空白や連鎖を使って強制的に自分の都合のいい場所に置かせる様にもって行くのがコツです。例えばある特定の色がストックに余っているときには自分の空列に自動的にその余った色が置かれて得点となりやすいです。またストックに5色あるような場合には相手の列が空白になるようにします。

指針として、各列で同色3個(3点×5列で15点)を完成させることを目指すとプレイしやすいと思います。15点というのはほぼプリズマの標準の勝利点だからです。ただし場合によってはアグレッシブに、1色を完全に捨てる代わりに相手をブロックするということもありえます。この場合にはスコアは10点くらいになるでしょう。なお一般的には同色4個置きは抑制力にしかならず、同色5個はありえないと言ってよいでしょう。

結論
慣れてくると同点タイになってしまうことが多いのが最大の欠点です。ルールはシンプルでちょっと変わっているので、紙と鉛筆で手軽にできるゲームとしても是非遊んでみて欲しいと思います。

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