アブストラクト・クニツィア1

多作なことで知られるクニツィアですが、その内容も幅広くゲーマーズゲームから子供用ゲームまで様々です。特に初期(90年代初頭)は2人用の完全情報ゲーム(いわゆる狭義のアブストラクトゲーム)も多数作っていますが、あまり知られていません。アブストラクトゲームはギプフシリーズなど一部を除いてはあまり注目を浴びることの無い分野です。

しかし、アブストラクトゲーム愛好者でありクニツィアファンである自分としては、クニツィアのアブストラクトを年代順に追ってみてはどうか?という考えが浮かび、不定期ながらここにシリーズレビューを書いてみようかと思います。あまり知られていないクニツィアの隠れた名作が見つかるかもしれません。

企画としては以前のアレアキャンペーンよりはかなりマイナーですが、アブストラクト好きが周りに多いことと、1ゲームが短いので比較的手軽にプレイできることなどなど自分の環境にあっていると思います。製品化されていないクニツィアのアブストラクトはたくさんあると思うのですが、製品化されたものに絞ってみます。第1回はコンプリカです。


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コンプリカ Complica
(説明2分 プレイ時間 実時間 5-10分 記載時間 10分)
Complica1.JPGコンプリカはプロリグノから1991年に発売された木製のゲームです。プロリグノは家具を専門とする会社だと聞いたことがあります。ゲームはどれも木製でインテリアにもなりそうなデザインです。このシリーズはコンプリカ、プリズマ、ピラミッド、カテナと全部で4つあります。そのうちカテナ以外は発売年が1991年となっており、その中でもコンプリカは製品番号が Artikel Nr. 101 と一番若いので最初にレビューをすることにしました。

背景
英訳ルールには以下のように書かれています。「コンプリカは1990年に著書『サイコロとカードを使った新しい戦略ゲーム』で初めて紹介された。コンプリカには色々なバリアントが紹介されているが、ダイアコンプリカ Dia-Complica が最も興味深く、今回新たに独立したボードゲームとして出版することにした。」 つまりコンプリカの本来の名前はダイアコンプリカなのです。

コンポーネント
箱はピンク色(これはこのシリーズ共通です)で、上部にはSMR 中央部には会社名 Pro Ligno 下部には SPIELEWERKSTATT (遊びの工房)と書かれてます。木製のボードのほかには緑と茶色の円形のコマが16個ずつ。コマは白い布袋に入っています。なおボードには4つの溝があり、ボードの片側からコマを各溝8個まで入れられるようになっています。

ルール概要
各プレイヤーは自分の色のコマを16個ずつ持ちます。手番には、どれかの溝に自分のコマを入れます。このとき溝の奥まで入れるのではなく、入り口の1列目に入れるようにします。それまで1列目にあったコマは2列目に、2列目のコマは3列目に、とスライドします。縦横斜めのいずれかで4連続並びを作れば勝ちです。もしも2人が同時に4連を作った場合はどちらかがより多くの列を作るまで続けます。さらに溝が全て埋まっても4連が出来ない場合は引き分けとなります。

なお、縛りのルールがあり、相手が直前にコマを入れた溝には自分のコマ入れることが出来ません。唯一の例外として相手が横並び(同じ溝)の3連を作った直後に限って、防御のために同じ溝に自分のコマを入れることが出来ます。

感想
最近50回ほどプレイしました。先手が若干有利かと思われますが、後手でも勝ち目はあります。溝のコマが全てスライドするので、思わぬところで4連が出来ます。相手が直前にコマを入れた溝には入れられないという縛りがシンプルながら素晴らしいルールです。一見、手番は4択から3択に狭まっただけで改悪なのではという気がしますが、うまく使えば相手の動きをコントロールできます。もし縛りのルールがないと、1列目に3つ置いたプレイヤーがかなり有利になってしまうので、縛りのルールは絶対に必要だと思います。それにしても毎手番3択(あるいはそれ以下)なのにどうしてこんなに悩ましいのでしょうか?4目並べ系のゲームとしてもっと広く知れ渡っても良いと思います。

Complica2.JPG考察
似たゲームにコネクトフォーという4目ならべがありますが、似て非なるものです。コネクトフォーではコマを溝の一番奥まで入れるので、一列全体がスライドするということは無いのですが、コンプリカではこのスライドが多彩な状況を生み出しており悩ましいです。

また言うまでもなく、縛り(相手が直前にコマを置いた溝には置けない)がこのゲームの肝です。同様の縛りのルールはのちに古代ローマの新ゲームのローマ七丘にも使われています。慣れてないうちはこの縛りのルールをつい忘れてしまいやすいので、手番に置いた所にはもう一つ重ねて自分のコマを置いて、相手はそこに置けないことを表すとよいかと思います(長考にならない限り不要だが)。縛りによって、相手にその溝に入れさせないために入れる、横並びの2連から3連に戦略的に育てられる、などタクティカルな手が可能になります。

戦略としては要所に自分の2連、3連を作り、相手がその溝に入れても自分の陣形が崩れないような形に持っていくのが一般的だと思います。同時に相手の2連、3連はのちに脅威となるのでボードの奥に押し込んでしまうのも手だと思います。

結論
おそらくコンピューターなどを使えば解けてしまうゲームだと思いますが、そんなことをせずに気軽に遊ぶのが良いと思います。説明時間も短いですし、1ゲームも慣れるまでは5分で終わります。慣れると10分くらいはかかりますが。

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